16-伊野波の石くびり
伊野波の石くびり
「伊野波の石こびれ無蔵つれて登るにやへも石こびれ遠さはあらな」古い琉歌で
名高い石くびり(曲がりくねった小さな石ころ道)と伝えられている。
男女の悲恋物語りの歌で、三線、舞踊の課題曲ともなっており、関係者が訪れる
場所である。
伊野波は本部町発祥の地として知られ、寛文6年(1666)今帰仁間切りより12村
を分離して伊野波(ヌファ)間切りを新設したときの主巴であり、番所が置かれ
たといいます。その部落の小高い茂みに小さな坂道がつづいています。
そこが、古歌、伊野波節で名高い「伊野波の石くびり」です。
伊野波の石くびり
無蔵連れて登る
にやへも 石くびり
とさはあらな
歌意は「伊野波の石ころ道の坂は、大変難儀なところであるが、愛する女性と連
れだってお互いに語り合いながら行くときはもっと遠くあってほしいと思う。」
との恋歌です。
伊野波生まれの男性と伊豆味生まれの女性とはお互いに相思の仲で、夜は女性と
と共に伊野波部落に泊まり、翌朝早く女性を連れて石くびりまでやってきました。
同所は人目にかからぬ格好の場所なので、若い二人は血潮をわかせつつ互いに語
り合いながら歩いていきました。しかし石くびりを過ぎると、やがて、「あとう
い」の峠にさしかかります。
それからは伊豆味の境界に入り、村人の目にかかると困りますので、二人はここ
で止むなく別れねばなりません。この悲哀の情を歌ったのが、伊野波節であると
語られていますが、様々な諸説があり、未だ確定した説には至っていません。